DETAILS OF “SOUVENIR JACKET” Vol.001 / スカジャンの刺繍型
当時実際に使われていた刺繍型はスカジャンの歴史の当事者である証。
横振りミシンを巧みに扱い、フリーハンドで刺繍されたスーベニアジャケット(スカジャン)もヴィンテージには存在するが、同じ図案を複数手がける場合は刺繍を施す生地に下絵を描かなければならない。ここで紹介するのは、刺繍の基礎となる「型」。これらの型は和紙に柿渋(渋柿の実から採取した防水・防腐用の液体)を染み込ませて固めた紋紙(もんがみ)を図案にあわせて切り抜いたもの。裁断された生地に型を置き、上から亜鉛華(あえんか=亜鉛の燃焼で生じる白い粉末で水に溶けにくい)と膠(にかわ)を混ぜたものを刷毛で塗る。そうすることで生地には型と同じ下絵が残り、そのガイドラインに沿って職人が刺繍していくという寸法だ。この手法は和装の刺繍ならではで、古くから絹織物や着物の刺繍にも同様の型が用いられてきた。
ここにあるのはテーラー東洋(東洋エンタープライズ)が保管する刺繍型の一部で、そのすべてが1940年代から1950年代頃、港商から依頼を受けた職人が実際にスカジャンの製作に使用していた原版。現存すること自体が珍しい極めて貴重な資料で、当時から携わってきた証である。